Fender Japan Extrad Series

 

 1986年のFender Japanカタログ ”TWANG”にCOLLECTORS SERIESのカテゴリーとして、PLAYERS、LIMITED EDITION、そしてこのEXTRADが登場した。ウッドマテリアルにオリジナルヴィンテージをも超える稀少な木材を使用し、USAオリジナルピックアップを搭載した”エクストラ・トラディショナルモデル”、その名も「EXTRAD」。

 '54年、'57年、'62年型ストラトキャスター(ST54-140、ST57-140、ST62-140)と'52年型テレキャスター(TL52-120)がラインナップされた。単なるヴィンテージレプリカに留まらない、限定・少量生産という思い切ったプロダクションシステムにより誕生した贅沢な逸品群です。

 1989年後期には「EXTRAD SERIES」として正式にシリーズ化。「厳選された木材、入念なラッカーフィニッシュがエクストラッドのベーシック」と謳われ、ボディのウッド・マテリアルやボディカラーの指定が可能なセミオーダーシステムを採用。次の4タイプ8モデルが、ラインナップされています。

 

表でも分かるように、ボディ材の選択により価格が変動。その他にもピックガード・カラーなどのオプションがありました。恐らくショップオーダーも含め、様々なヴァリエーションが存在したと思われます。

その後、1990年から94年まで毎年カタログに掲載されたEXTRADは、1995年カタログに掲載された94年カスタム・エディションモデルのST54-150AS発売と入れ替わるようにEXTRADは姿を消しました。わずか8~9年という短い生産期間ではありましたが、そのUSAモデルを凌ぐようなハイスペック、ハイクォリティは、国産クラフトマンシップの実力を世界に知らしめました。

特徴

最初期1986~87年頃の個体は、ヘッド裏に”EXTRAD”のデカールはありません。

翌年1988年頃~91年頃の個体には、ヘッド裏に”EXTRAD”デカールが見受けられます。

その後1992年頃以降のモデルには、”Custom Edition”デカールが貼られています。

次に、ネックを外し、ネックポケットに注目です。STS-54、STS-57、STS-62、TLS-52といったEXTRADのモデルタイプを表すスタンプや、Ⓢ等のスタンプ等が見られます。

また、初期の個体にはネックポケットに塗装する際の細い柄の跡が見られ、1989年~90年頃以降ではポケット部の大部分に塗装がのっていません。

“STS-57”、”A”スタンプ

“STS-62”、”A”、Ⓢのスタンプ

“TLS-52”、”D”、Ⓢスタンプ

“STS-54”、Ⓝスタンプ、オーダー品の型番”KX-151”、カラー表記”T”のマジック書き、ポケットの表記が確認できたら、ネックエンドを確認します。

ネックエンドには、鉛筆書きで製造日の記載があります。
“EXTRAD”の発売は1987年からですが、製造は約1年ほど前より始まっており、'86年のデイトも確認出来ます。

'90 ST54 Custom Order / BLD (#J022199)

ブロンドカラーにゴールドパーツ使用のセミオーダーモデル。ヘッド裏には”EXTRAD”デカールが輝き、ポケット部には”BLD(ブロンド)とYWH(イエロー・ホワイト)の中間”と記載!! まさにオーダーだから出来る驚きのスペシャル・スペックです。
※ピックアップは、テキサス・スペシャルへと換装。

'89-'90 ST54 Light Ash / T (#J021833)

1989年後期にはEXTRADが正式にシリーズ化。本機はアッシュボディ採用モデルで、ボディバックにバックル傷がありますが、抜群のサウンドを誇る一本!ヘッド裏には”EXTRAD”デカール、ポケット部にはEXTRADの証”STS-54”のスタンプ、オーダー品の型番”KX-151”とカラー表記”T”のマジック書きが確認できる。

'86-'87 ST57-140 / BLK (#E733378)

1987年初期製、当時のプライスカード付き!! 比較的使用感は少なく、交換パーツ等も無いコレクターズ・アイテムと云える一本です。最初期EXTRADなので、ヘッド裏のデカールは無し。ポケット部には塗装の際の柄の跡がくっきりと残っています。

'93-'94 ST62-120 / 3TS (#Q030142)

1993年~'94年製の後期EXTRADモデルで、アルダーボディにミントグリーンパーツ・オプション仕様。なんと指板にはハカランダを使用した贅沢な一本です!!ヘッド裏には”Custom Edition”デカール、ポケット部にはⓈと”K-625 ORDER”とスタンプされており、塗装はのっていません。

L80s-E90s ST62-120 / 3TS (#E972639)

バリトラのメイプルネックが目を惹く一本!! 弾き込まれており、渋い雰囲気を醸し出しています。乾ききったアッシュボディによるクリアなビンテージトーンが秀逸。プレイヤーさんにオススメの一本です。ヘッド裏には”EXTRAD”デカール付き。ネックはEシリアルで、アッセンブリーのPOTデイトは'87ですが、ボディは塗装ののっていないネックポケットから80年代末から90年代のものと思われます。在庫の初期Eシリアルネックと後期ボディを組み合わせて出荷された個体と推測されます。

'88 TL52-120 / BLD (#3605)

ネックデイトは1987年9月8日で、付属のワランティーカードには1988年製と記載されています。ヘッド裏デカール無しの初期仕様で、ネックポケットに”TLA-52”とスタンプされた珍しい一本です。使用感の少ないコレクターズ・アイテム!!

今回の企画を思い立った訳とは

私事の余談ではありますが、ここで実際にあったエピソードを一つご紹介したいと思います。それは約一年ほど前のこと、僕の友人が1987年製Eシリアル期のST62-140(EXTRAD)を売却するべく、地元の某楽器店さんを訪れた際の話です。

稀少で素晴らしいギターだから、さぞかし良い査定額が出るだろうと意気揚々と持ち込んだ友人。しかし、それはすぐに叶わぬ夢と砕け散り、悲しみの底に突き落とされました… なんと店員さんにVINTAGE SERIESの、所謂通常ラインのモデルと勘違いをされて、想像には程遠い査定額を提示されてしまったそうです。きっとヘッド裏デカールの無い初期モデルで(後述)、ネックポケットにも具体的なモデル名のスタンプが無かったことが、このような悲劇を呼んだようです。

そんな友人が悲しげな表情で、TC楽器にそのST62-140 EXTRADモデルを持ち込んでくれました。一見しただけで、並々ならぬ最上級モデルらしい抜群のクオリティがヒシヒシと伝わってきました。しかし、元々カタログの他に詳しい資料なども少ないモデルとなりますので、より慎重な査定業務が求められます。これまで長年に渡り蓄積されたTC楽器の販売データをフル活用するなどして、楽器の持つ本来の価値を最大限に評価!!弾き出した査定額は、悲しみに沈んだ友人の暗い表情を一掃して、大満足の笑顔へと変えました。

この喜びに満ちた友人の笑顔がとても印象的だったので、私はEXTRADやJVシリアル、LIMITED EDITIONなどのレアなモデルを全力で収集することを決意したのでありました。それから約1年に渡ってTC楽器のネットワークをフル活用し、国内に留まらず世界中から貴重なモデルを集めることに成功しました。その結果は、担当した私も驚く20本をも超える成果を上げることが出来ました。

せっかく集めた貴重な楽器の数々ですので、その開発や製造に携わった全ての方へのリスペクトを込めて、また私の友人のように悲しい思いをする人が出ないよう(笑)、少しでもお役に立てればとの思いから本コラムを企画しました。カタログやネットだけでは情報は惜しくも調べきれず、僕自身も悔しい思いをしました。私、1988年生まれの28歳、未熟な若輩者ですが、実機を前に勉強しつつ、頑張ってまとめました。誤っているところや気になる点、またご質問等ありましたら、お気軽にお知らせ頂けましたら幸いです。

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